この曇り空は私と似ていた
「聞こえたよ。でも……どうして?」

「今は言いたくない、言えない」

そう言って美華吏は私が差し出したホウキを受け取り、掃除を始めた。

言いたくない、言えない。美華吏は不思議な雰囲気を感じさせるように、そうまわりくどく言ってきた。私はその様子にしばらくぽかーんと口をあんぐり開けていた。

「ほら、掃除するよ」

美華吏の声で私は我に返る。そしてホウキをもう一つとり、美華吏が掃いている所の反対側から床を掃いていった。

サッサッサッサッ。

ホウキで床を掃いている音は聞いていてとても心地よい。たとえ、この状況が気まずいって思っていてもだんだん心が安らいでいく。

しばらくして十五分間の掃除時間が終わった。私は廊下にある手洗い場にバケツの水を捨てにいく。それから掃除道具を元の場所に戻す。

すると、

「お前さ、そのままだといずれ壊れるよ」

美華吏がいきなり穏やかな口調でそう言った。

「それは……どういう……」

私は言葉の意味がわからなくて戸惑いを隠せない中、ゆっくりと声を出した。
< 18 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop