この曇り空は私と似ていた
第一章 私は私が大嫌い
「さてさて受験生で忙しいみんな、今日のHRは自分の長所についてよ。みんなにはどんな長所があるかな?」

不思議な彼が転校してきてから一週間経ったある日のHR。教卓に立っていた私達のクラス担任である浜崎先生がいかにも張り切っている様子で言った。

浜崎先生はピュアな教師だ。それはうざくて呆れるほど。

だから私は今日も教室の窓側の一番後ろの席で浜崎先生の声を黙殺するようにこっそりと本を読んでいた。

みんなが浜崎先生の話を真剣に聞いている中、私は長所と聞いて本を閉じた。それから頬杖をつき、窓枠に四角く切り取られた青い空を見ながら思う。

ああ、長所なんてどうせくだらないものなんだろう。

私には長所が何もない。学校に行ってただやらされているだけの勉強も運動もみんなの平均近く。友好関係はまあまあいいほう。

ただ家ではめんどくさがりな性格で、家事とか何もやらない人だから母に怒られてばかりだ。

私はいつも機嫌が悪い。端から見たらおかしい人かもしれないが、自業自得ってのはわかっているのに、直そうとか変わろうとか思ったことは一度もない。別にこんなことをやって未来の役に立つのだろうか。脳裏ではいつもそんなことを考えてしまう。

そもそも勉強勉強って中三になってからよく親からも先生からも聞く気がする。でもこんな私のことだからいつもめんどくさいと放っておいた。
< 2 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop