この曇り空は私と似ていた
私は美華吏のその言葉を聞いて頭の中にクエスチョンマークが浮かんだ。

「どうして?」

「だってさ、親や先生、友達のためにやってるんだもん」

それは心底、すぐに納得できる理由だった。

誰かのためにか。私はそんなことも意識はもちろん、していない。だから好きなものが増えないのかもしれない。やりたいことが見つからないのかもしれない。

私はそう思いながらも、勉強をまた教え始めた。


どのくらいの時間が経っただろうか。気づけば日は沈んでいて辺りは暗がりに満ちている。時計は五時半を差していた。

美華吏は数学では赤点ばかりらしいから当然のように呑み込みは予想外に遅く、時間がかかったけれど、そろそろ帰らなければ母が心配するだろう。

「今日はここまで」

「終わったー」

美華吏は嬉しそうにそう言ってのびをした。

「なぁ、清加。この前は変なこと言ってごめんな」

美華吏は唐突にそう言ってきた。

私は何のことだろうかと頭の中をぐるぐる探し回る。
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