この曇り空は私と似ていた
「盗まれてたの知ってたから。場所はわかんなかったけど見つかけれてよかった」

美華吏はそう言って私ににこりと笑いかけた。

でも授業中っていうところでどこからどうみてもおかしい。

授業よりもこっちの方が大事だったということ?

それとも……私が勉強を教えたからその恩返し?

そう考えると頭はむかむかしてきた。

そんなことしなくたっていいのに。

けれど心の片隅では嬉しいと思っている自分がいた。

やっぱり美華吏は優しすぎる。こんなダメな私にも優しくしてくれて、一体どこでそんな心を手に入れたのか、ますます問いただしたくなるぐらい。

「なぁ、清加」

美華吏は私の顔を覗きこむようにして呼んできた。

途端に私は我に返る。

「今日、なんか変じゃないか?」

私は即座にコクリと頷く。

本当にどうかしている。

「ま、様子見てみようぜ。で、これからどうする?」

美華吏は少し困ったような顔をしてそう言った。
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