この曇り空は私と似ていた
どうするもなにも今は授業中だ。教室に行けば問答無用で先生には注意されるだろう。

おまけに私達は受験生。その分厳しく言われそう。

私は心の中でため息をつく。

わがままだっていうのはわかってる。だけど気持ち的には教室に帰るのも気が重いし、このままここにいるか、どこかでさぼるかでもしたい。

そうでもしないと、またいたたまれなくなって逃げてしまうだろう。

「戻りたくない」

私は吐き捨てるようにそう言った。

「やっぱりな」

美華吏はそう言って私に笑いかける。それから私に手を差し出してきた。

途端に私は戸惑いを隠せなくなる。

今まで誰かから手を差しのべられたことはあっただろうか。

いや、当然のようにない。私は何をやってもダメな人間なのだから。

私は私が大嫌い。それなのにどうして美華吏はこんなに優しくしてくれるのだろうか。

わからない。

でも心底、嬉しいと思っている自分がいた。

だから私は差しのべられた手の上に私の手を重ねた。

その手は温かい。その温かさはまるで今日のことに怯えていた私を安らげてくれているようだった。
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