この曇り空は私と似ていた
私はそのまま、美華吏に手を引かれて目の前にあった音楽室へ連れていかれる。

そこには大きなグランドピアノと黒板。そして均等に並べられた机。ごく普通にどこにでもありそうな音楽室だった。

美華吏はグランドピアノの近くに置いてあった椅子に座り、鍵盤を適当に鳴らした。

途端に美しい音が静かな音楽室に響く。

別に華やかさもなければユニークさもないたった一つの音なのだけれど、その音は私の耳に軽やかに聞こえてきた。

それから美華吏は鍵盤を押してメロディを奏で始めた。

そのメロディは小さい頃に聞いたような懐かしい感じがして、私は不思議な感覚を覚える。

私は音楽が好きかというと、好きな方に当てはまると思う。

音楽は小説と同じでいつも私の心を安らげてくれて命の恩人だと思う時もある。

音楽も小説も私の心を豊かにしてくれる。励ましてくれる。ネガティブな私を支えてくれている。だから好きだ。

美華吏は静かにそのメロディを弾き終わる。

反射的に私は拍手をおくった。

「お前さ、やっぱこういう時素直だよな」

生意気そうに言われて私は頭がムカムカした。

素直……?
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