この曇り空は私と似ていた
私はそんな気持ちを振り払うようににこりと笑っていつものように「大丈夫」と返す。

美華吏と私は正反対。だから話したって私の心がわかるわけない。

それに心配させたくないし、迷惑もかけたくない。

だからこれからも美華吏の前では明るく振る舞っていよう。

そう改めて心の中で誓った。

「素直じゃねぇな。清加は。本当は辛いんだろ?」

そう言って美華吏は私の体を背後から温かく包んでくる。

予想外の展開に私は状況が呑み込めずにいた。

ドクドクとなる心臓の音が耳にまで聞こえてくる。

いけない。いけない。このままでは本音を明かしてしまいそう。

「ほら、受け止めるから話してよ。全部」

美華吏は穏やかな口調で言う。

今までそうとう私のことを心配してくれていて、もう見ていられなくなったのだろうか。だからこんなことをしてまで無理矢理話させようとしているのか。

そう考えると、いらいらしてきた。

美華吏と関わり始めて、まだたったの一ヶ月。それなのにどうしてこんなにも優しくしてくれるのか私にはわからない。

本当、バカみたい。
< 47 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop