この曇り空は私と似ていた
「受験生だからね、疲れることもあるよ。だから悩みがあるなら聞かせて。具合が悪いならベッドで寝ててもいいさね」

桜先生はコーヒーを飲み、一服をしながらそう言った。

「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて」

そう言って私はベッドで寝かせてもらうことにした。

幸い、ここで寝ているのは慣れているのか何も違和感は感じない。そのことが不思議に思うほどだ。

桜先生がベッドの近くにある肌色のカーテンを閉める。これが仕切りとなっていて外からはもちろん見えない。だから周りの目を気にすることなく寝かせてもらえるのだ。

私はその肌色のカーテンを見つめながらゆっくりと眠りについた。


どれぐらいの時間が経っただろうか。気づけば時刻は十二時をまわっていた。私はゆっくりと起き上がり、仕切りのカーテンを開く。どうやら桜先生はいないようだった。ということで、『具合が良くなったから教室に戻ります』という置き手紙を残して私は保健室をあとにした。

私は三階へと続く階段を上がる。その途中、見覚えのあるような人とすれ違う。

「一番ダメなのは自分をダメだと思うことだよ」

すれ違い様に彼は私の耳に囁くようにそう言った。

突然の彼の不思議な発言にドキリと胸が鳴った。

今、彼から何て言われた?
< 5 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop