この曇り空は私と似ていた
「いいの。悪いのは私だし」

「母さんもさ、昔いじめられてたな」

私はその言葉を聞いて、驚いたように目を見開く。

母は祖母から厳しく育てられたせいか、小学校を卒業するときには、洗濯も料理も掃除もできるようになっていたらしいという話は何度も聞かされたことがあったけれど、その中でもいじめにあっていたなんて初耳の話だ。

「でもいじめられていいことなんてめったにないよ。清加はさ、その……宇高君だっけ?これからも仲良くね」

私はコクリと頷いた。

正反対だから釣り合わないって思っていたけれど、その中でも似ているところがあったからきっとわかりあえる。

そう思っていると、なんだか胸がドキドキとしてきた。

「あと自分を大切にしなさい。その心は優しすぎるよ」

自分を大切にすることって、家事の一つもできなくて、すぐダメ人間だと思ってしまう私にできるのだろうか。

わからない。

「あっ!そうだ。めんどくさいでも一度やってやりなさいよ。ほらほら明日の弁当の材料作り手伝って」

母は張り切ってキッチンへ行く。

母のこんな姿を見るのはいつぶりだろうか。なぜかは知らないけれど、六年ぶりだと思う。
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