この曇り空は私と似ていた
私はそう言いながら傘をさす。

一緒に登下校をしたりするのは、幼なじみとしかしたことがなかったから、なんだか少し緊張する。

「元気そうだな」

美華吏は笑顔でそう言った。

朝、機嫌がいいのも何年ぶりかのように久しぶりだ。

「今度あいつらがやってきたらいい加減やめさせるから」

あいつらとはいつも私の鞄や上履きを盗んでいく佳奈達のことだ。

私はその声を聞いて、ふと足を止める。

美華吏がいるけどやっぱり、学校に行くには気が重い。

空っぽの靴箱を見るのが辛い。

何も置かれていない机を見るのが辛い。

あんな日々はもう、うんざりだ。

全身には鳥肌がたって足がすくんだ。

「大丈夫。俺がいるから」

そう言って美華吏は私の震えていた右手を優しく包んだ。

誠に使い勝手の良い労りの挨拶だけど不思議と私も大丈夫と思えて足を前に進め始める。

私はふと美華吏に繋がれた右手を見る。

今にも心臓が口から飛び出しそうになった。私はその気持ちを顔に出さないように堪える。
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