この曇り空は私と似ていた
行事や部活もたくさんあった。中学ではめんどくさいからと言って帰宅部にしていたが、高校では何かの部に入ってみようと思う。そこで興味を持ったのは補習部だ。珍しそうな部活だが、パンフレットに書いている限り、ただ部員同士で、勉強を教え合うだけの部活なんだそう。

それからしばらく勉強をして気づけば夜の十時。苦手な英語を真剣にやってみたので頭が働きやすく、自分の中でテストをしてみれば、予想外に解けた。

私は本気を出してやればできる人なんだ。そう実感させられた夜だった。


翌朝。珍しくいつもより、早くに目が覚めた。

ゆっくりと起き上がりベッドから出て、一階へと行く。キッチンから包丁で野菜を切る音が聞こえた。

小四の頃の私を思い出すことができたのなら、包丁に対する震えにも打ち勝たなくてはいけない。そうしないと、料理は永遠できないままだろう。

「おはよー母さん。私にも野菜切らせて」

「あら早いわね。じゃあ人参切ってみる?」

そう言って母は包丁をまな板の上に置き、私を手招きする。

私は軽やかな足取りでキッチンへ行った。そして包丁を持とうとすると、またもや恐怖が込み上げてきた。

私はこのままではいけない。いい加減変わらなくちゃ。大丈夫。私は本気になればやれるんだから。きっと失敗したりしない。

呼吸をひとつし、それから包丁で人参をゆっくりゆっくり千切りにしていく。切れば切るほど震えは収まってきて、不思議に思った。
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