この曇り空は私と似ていた
「しっ!近所に聞こえちゃうじゃない。本当、天然なんだから」

七生は怒った顔でそう言った。

あの頃の記憶を思い出して、今と比べてみても、相変わらず二人は変わらない。二人らしい反応だと思った。

そのことに思わず、噴き出してしまう。だけど二人は何も動じなかったので内心ほっとした。

「大変だったんだからねー。先生からも母からも清加には言うなって、口止めされてたんだから」

七生はぶっきらぼうにそう言って、口をとがらした。

陽果もその声に、そうそうとでもいうように頷いている。

確かに口止めされて、五年も黙っておくのはとても大変だ。するりと口に出してしまいそうで、怖かった時もあっただろう。

「ごめんね。なかなか思い出せなくて」

「じゃあ、あの頃のクラスメイトにも伝えておくね」

陽果はふるふると首を振りながら言った。

「佳奈もそのひとりよ」

七生はぶっきらぼうにそういった。

佳奈も私が記憶喪失だったことを知っていたなら、私があの頃の記憶をなかなか思い出せなくて、ムカついたこともあったんだろう。

「ということは……夢は見つかった?」

陽果は目をずっと封印されていた、宝箱を見つけた子どものように、キラキラさせてそう言った。
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