この曇り空は私と似ていた
「秘密」

私がそう言うと、二人はつまらないような顔をしてすかさず話題を変えた。

躊躇いがあったからか、安堵のため息をつく。

そのあとは笑いあったりしながら話をした。こんなに楽しい気分でいられる朝は久しぶりだ。きっと陽果と七生がいるからだろう。

空を見れば、家を出る時は雲の奥に月光の気配がわずかにうかがえるような曇り空だったのに、いつの間にか雲ひとつない晴天になっていた。


その日の授業は全力で取り組んだ。そしたら予想外のことに、苦手な英語の小テストでは満点がとれたり、体育では「糸湊、どうした?いつもとなんか違うぞ」なんて先生に褒められたりした。

おかげで気分は絶好調。こんなに学校が楽しいと思えたのは久しぶりだ。

いつかに聞いたような、ピアノの音をふいに思い出して、鼻歌でリズムをとりながら、掃除場所へ行く。

掃除場所である保健室に入れば、既にホウキで床を掃き始めている美華吏がいた。

「なんか、ご機嫌だな」

さっきの鼻歌が聞こえてしまったらしく、嬉しそうに言う。

私は「そう?」と恥ずかしくなりながらも答えた。

「その鼻歌さ、俺が前にピアノで弾いた曲だよね?」
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