この曇り空は私と似ていた
言われて思い出す。私が初めて鞄と上履きを盗まれて途方に暮れていた時、授業中というのをわかっておきながら、それを見つけ出してくれて、おまけに音楽室でピアノを聞かせてくれた。その時のメロディとぴったり同じだ。

「そうだよ」

その言葉を返しながら頭の中で、あのメロディを思い出してみると、どこかで聞いたことがあるような、不思議な懐かしさと心地よさを改めて覚えた。

「明後日の夕方、あの場所へ来てくれないかな?そこでピアノを弾きながら待ってるから」

どこか不思議な雰囲気を感じさせるように、美華吏は言った。

まるで私達が前に逢ったことがあるかのように感じる。実際、彼のことは入学当時から優しいながらも、どこか不思議な存在となっていた。

もしかして、私はまだ思い出せていない記憶があるのかも。そこにきっと美華吏の謎は封印されたように隠されている。

あの場所というのもよくわからない。少なくとも前に行ったところがある場所なのだろう。でも美華吏と昔に逢ったかっていうとやっぱり思い出せない。

「あの場所じゃ、わからないよ」

「やっぱり覚えてくれてないんだな。大丈夫。清加は絶対に明後日、そこにたどり着けるから。今はどこかわからなくても」

自信に満ち溢れたような顔をして、美華吏は言った。
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