HONEYBEE(1)~アラフォードクターと一夜から始まる身代わり婚~
高木家の事情

隼也side~

頭部裂傷の男性の縫合を終え、休憩室でひと息を付いた。

「何だか・・・高木先生ニヤけていますね」

同じ宿直の相馬先生が俺の緩む口許を見つめる。

「瑞希が俺の為に夜食のおにぎりを作ってくれたんです」

「へぇー…それはいいですね。俺なんて…カップ麺です」

相馬先生は食べかけのカップ麺を指差す。

二人で急患を待つ間。
一緒に夜食を食べた。

「!?このおにぎりの形は…」
相馬先生は歪なおにぎりの形に首を傾げる。
「三角おにぎりだと訊きましたけど…」

一緒に暮らして分かった瑞希の料理下手。
三角ににぎったはずのおにぎりは歪な形になっていた。
「どうも…アイツ…料理は苦手で…」

夫としては妻をフォローしないと。

「形は歪ですけど…彼女の愛はこもっています」

「何気に惚気ちゃって…これだから…新婚さんは嫌だな…」

「俺は別に惚気なんて…」

「しっかり惚気てますよ…高木先生」

俺は右のおにぎりを頬張っていると急に電話が鳴った。

「来ましたね…」

相馬先生は腰を上げて、電話に出た。

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