HONEYBEE(1)~アラフォードクターと一夜から始まる身代わり婚~
父さんと工藤さんの付き合いはあれこれ五年。その五年間、俺は他の病院に勤めていたから、工藤さんの存在は知らなかった。病院経営の上で大変お世話になった人。

その認識しかなかった。
この清和会に戻って半年、工藤さんと接して来たけど、やっぱり信用できない人。
父さんは彼を信用しきっているけど。

俺の工藤さんの対する疑心は増すばかりだ。

俺はおにぎりの入っていたタッパーを瑞希に返そうと小児病棟のナースステーションに足を運んだ。

他の殺風景な病棟とは違って、子供の好むような壁紙や内装にアレンジされていた。

ナースステーションに瑞希の姿はなかった。

「奥さんなら、プレイルームですよ。高木先生」

「ありがとう御座います」
俺は乾看護師長に礼を言って、プレイルームへと足を伸ばした。



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