HONEYBEE(1)~アラフォードクターと一夜から始まる身代わり婚~
智咲先輩を追い回していたストーカー男は警官の銃弾に倒れた。
ストレッチャーで運び出される男の顔色は蒼白く、意識がなかった。
彼は先に運び出され、手術室へと運ばれて行った。
彼の後を追うように隼也さんが出て来た。

「隼也さん…大丈夫?」
「あぁ…俺はこれから彼の手術にあたる。瑠生さんも彼に切られ、怪我を負っている」

「お兄ちゃんが…」

「仙波さんを守っての名誉の負傷というか…ともかく急ぐから後は頼む」

「分かった…」

******
私がお兄ちゃんの元に着く頃には傷口の縫合は終わっていた。


「お兄ちゃん…無茶し過ぎよ」
「瑞希、丁度いい所に来てくれたわ。私はガス爆発事故の怪我人の手当てをするから…瑠生さんをお願い」

「何をすればいいんですか?」

「後は包帯を巻いたらおしまい」

「わかった」
「ゴメンなさい…瑠生さん…」
「いえ…智咲さん…頑張って下さい」
「ありがとう」
智咲先輩はお兄ちゃんのそばに居たいキモチを抑え、救命の看護師として怪我人の手当てに向かう。

「こうして瑞希に傷の手当をして貰う日が来るなんて…思いもよりませんでした」



私はお兄ちゃんの傷口に包帯を巻いていく。

「私は決心しました」
「んっ?」

「やっぱり…智咲さんと結婚します。二人の子供と血の繋がりはありませんが…父親として立派に育ててみせます」

「お兄ちゃん…その言葉は私ではなく、智咲先輩に言ってあげて」

「そうですね…」
お兄ちゃんは他の科の医師や看護師も混じり、野戦病院のようになった救命の様子を見つめた。

「ゴメン…私も手伝いに行くわ…」

「じゃ私は部屋に帰ります…」

「後で鎮痛剤を持っていくから…今は構ってあげられなくてゴメン」
「瑞希も頑張って下さい…」




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