HONEYBEE(1)~アラフォードクターと一夜から始まる身代わり婚~
「貴方が拓郎さんだったですね…拓郎さんにずっと似てると思ってました」

「私だって夏美さんにずっと似てると思っていましたよ…だから…貴方を夏美さんの身代わりのように…でも、それはダメだと…瑞希に言われて…ずっと…悩んでいました。
でも、貴方と暮らしていくうちに私の中では夏美さんは当に消えて…智咲さん貴方一色になってしまいました。
咲ちゃんと匠君は紛れもなく私達の子供…もう私達の間に障害ありません…結婚してくれますよね…」

「はい…瑠生さん」

「ほら」
と私は久世さんに促され、二人にして病室を出る。

「社長は本当に抜けてるな…でも・・・咲ちゃんと匠君が社長の本当の子で良かったよ」

「久世さん!?」

「・・・だって、二人が結婚して、血の繋がりのある子が誕生したら、どうなっていたか分からないだろ?」
大手企業の社長の愛人の子だと言っていた久世さん。
彼は咲ちゃんと匠君の行く末を気に掛けていた。
仮に本当に二人と血の繋がりが無くても、実子が誕生しても、お兄ちゃんは差別しないと確信している。
お兄ちゃんは人の痛みが分かり、心優しい人だから。



「お兄ちゃんは実の子が産まれても…咲ちゃんと匠君のコトを大切にしたと思うわ」

「まぁ、社長の性格からして、俺もそう思うけどな…」



「色々とありがとう…これからもお兄ちゃんをよろしくね。久世さん」

「ふん…そんなコト言われなくてもわかってる。『ジーザス』クビになって…路頭に迷った俺を救ってくれた人だからな…一ノ瀬社長は…じゃ俺は社に戻るよ。院長夫人」

久世さんは軽く笑みを浮かべて手をヒラヒラさせてエレベーターホールに向かって歩いて行った。


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