HONEYBEE(1)~アラフォードクターと一夜から始まる身代わり婚~
私は我が子に励まされ、精密検査を受けた。
胎児治療に必要な厳しい条件もクリアした。

二人で揃って、お義父さんの待つカンファレンスルームに足を運んだ。
そして、詳しい治療説明を受ける。

「母体を通して胎児に麻酔をかけ、母体の腹壁から針を通して、胎児の胸左室流出路へと進める。その位置に穿刺針を固定し、ガイドワイヤーを大動脈内に進めて、それに沿ってバルーンカテーテルの大動脈の位置に固定し、バルーンを拡張させて、弁の形成を行う」


お義父さんは図式を交え、説明してくれた。

「俺が執刀し、助手には相馬先生を付け、麻酔科医は伊東先生が担当する。瑞希さんの希望は?」

「相馬先生ではなく、夫に助手を頼んでもいいですか?」

「あぁ、構わない…どうする?隼也」

「俺は父さんの助手を務めさせて貰うよ」

「そうか…」

「でも・・・仮に母子と共に危険だと判断した時はどうする?隼也に瑞希さん」

「・・・それは…」

「母親の瑞希の命を優先して下さい…父さん」

「隼也さん!?」

「…俺は彩芽のようにお前を失いたくない…悪いけど…その場合は…子供を諦めてくれ。瑞希」

「隼也さん…」

「これが同意書だ…隼也」

お義父さんは隼也さんに同意書を渡した。

―――お姉ちゃんのように私まで失いたくない。
そう彼に思い詰めたように言われ、私は何も返せなかった。

お姉ちゃんを失い涙を流した隼也さん。

全身で愛する人を失った悲しみに暮れた彼の姿は私も見たくなかった。

今は神の手を持つと言われているお義父さんの腕を信じるしかない。

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