HONEYBEE(1)~アラフォードクターと一夜から始まる身代わり婚~
湿った彼の舌が丹念に耳孔を舐め回して、そのまま唇を離されたかと思えば、耳朶を甘く噛んだ。

「んっ…ダメってば…」

「そんな甘い声で啼いて、ダメとは全く説得力ないぞ…瑞希」

そして、彼は私の上唇を甘く噛み上げ、そのまま優しくキスを落とした。

あの日の夜も私と隼也さんはこうして何度も甘いキスを交わしたのだろうか?

カラダの中に奇妙な甘い痺れを感じる。

でも、彼は唇を離した。

先ほどまで、味わっていた柔らかな彼の唇の感触と温もりが忽然と消えてしまった。
名残り惜しそうに見ていると彼が意地悪く唇を歪める。

「随分と物欲しそうな目だな…瑞希」

「・・・し、隼也さんって…意地悪ね。お姉ちゃんにもこんな風に意地悪なコトしていたの?」

優しいだけの人かと思ったけど、意外と意地悪な所もあるようで…

「彩芽は病人だったからな…苛めたコトはない…それに…俺と彩芽はキス以上の関係はなかった」

「えっ?」
あれだけ長くお付き合いしてたのに、キスだけの清い関係とは心の奥から驚いた。

「ほら、停まるぞ」

救命救急のある一階のフロアで停止した。
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