HONEYBEE(1)~アラフォードクターと一夜から始まる身代わり婚~
「いただきます…」

私は彼の用意した朝食を口に運んだ。

目の前の椅子に腰を下ろす彼は伏し目で温かいコーヒーを啜っていた。

私よりも十二歳年上の三十六歳独身。
生まれつき心臓の弱かった姉。
彼の父親はその道のエキスパートだった。
彼もまた、父と同じ道を志し、歩み始めていた。
この二人に姉を任せておけば、大丈夫だろうと皆そう思っていた。でも、心臓移植しか手立てが残されていなかった姉はドナーを懸命に待っていたけど。

―――命が尽きてしまった。

当時、専攻医だった隼也さん。

許婚の姉を失い、暫くは見ていられない状態となり、二年の研修後は他の救命救急センターで後期研修医としてキャリアを積んだ。

半年前、清和会に戻り、救命救急科部長として、常に現場重視で、多くの人達の命を救っていた。

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