HONEYBEE(1)~アラフォードクターと一夜から始まる身代わり婚~
「ありがとう、一ノ瀬さん。俺のせいで梓に苛められてない?」

「全然…逆に無視されています」

いつも明るく気さくな久世さんだけど。
色々とあったのか顔に疲労の色が見え、声にも覇気がなかった。

「身から出た錆と言うか…」
彼は自虐的に呟き、嘆息する。

「次の仕事は…」

「・・・未定…暫くは無職かな…あの天下の「ジーザス」をクビになったんだ…次の就職先なんて…見つかりっこないさ…」

「久世さん…」

「そうだ・・・今日は日勤?」

「そうですけど…」

「なら…俺と食事しないか?場所は合コン場所になった六本木のバーレストランでどう?」

「え、あ…それは…」

「・・・俺、知ってるよ。君のお姉さんが高木先生の元許婚だって…君はお姉さんの身代わりでいいの?俺なら君だけを見てあげるよ」


彼は耳許で甘く囁く。

私の心にストンと彼の甘い誘惑の言葉が落ちて来る。
禁断の果実の匂いがした。

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