HONEYBEE(1)～アラフォードクターと一夜から始まる身代わり婚～

彼の運転で向かった先は近所のラーメン店ではなく、フランス風の田舎の家をイメージしたこの辺りでは有名なフレンチレストラン。

「あそこか…相馬先生に言う店は…」

相馬先生が心配して隼也さんのスマートフォンに電話を掛けて来た。
隼也さんは慌てて、私から離れてキッチンの隅で話していたけど。
声の大きい隼也さん。
電話の内容が駄々洩れだった。
彼は年の割に相馬先生に比べて、女性を喜ばせるのが苦手なタイプかもしれない。
でも、そうやって、年下の相馬先生のアドバイスを素直に受け入れる所が可愛く思えた。

「独り言だ。気にするな」

隼也さんはハンドルを切り、駐車場へと入って行った。

「ラーメン屋さんは？」
私はさりげなく突っ込んで、彼の返答を待つ。

「あ…初めての夕食だ…お祝いも兼ねて…フレンチの方がいいかと」

「え、あ…そう」

「嫌か？」

「ううん、嬉しいわ。でも、最初から言ってくれたら、もう少しおしゃれするのに」

でも、私がおしゃれすれば、素知らぬ振りは出来なかった。

「悪いな…でも・・・瑞希は何を着ても可愛いぞ」

「…隼也さん！？」

「出るぞ」

「はい」