HONEYBEE(1)~アラフォードクターと一夜から始まる身代わり婚~
私は休憩の合間を縫い、救命医局を訊ねたけど、隼也さんの姿はなかった。
「瑞希がここに来るなんて…珍しいわね…」

「あ…智咲先輩」

彼女は仙波智咲(センバチサキ)
私の通っていた看護学校の先輩。先輩とはその当時人気のあった韓流アイドルのライブで知り合い、同じ推しメンのファンだと知り、意気投合。三歳違いだけど、仲良くなった。
きめ細やかな白い肌にシンメトリーな美人な顔立ち。
その上、モデルような長身のスタイル。
赴任する先々の病院でドクターや患者さんから大モテで、トラブルとなり、医療現場をジプシーのように彷徨っていた。
そんな彼女に『清和会』を紹介したのは私だった。

「高木先生は?」

「高木先生??あ…屋上かな?」

「屋上??」

「それよりも瑞希…昨日の合コンは楽しかった?」

「え、あ…うん・・・でも・・・お目当ての人は村上さんに取られちゃって…」

「そうなんだ…」

「高木先生は屋上ですね…」

「昨日、搬送されて来たバイク事故の男性…亡くなったから…少し凹んでるみたい…」

「えっ?」

「その人には婚約者が居たの…その婚約者の女性が高木先生のコト責めていたし…」

私には一言もそんなコト話さなかった。
普通通り、明るく気さくな雰囲気にしか見えなかったけど。
「ありがとう…智咲先輩」
「ほら、お近づきになれるチャンスよ…瑞希。
頑張って」

私のキモチを知る智咲先輩は背中を押して、屋上へ行くよう促した。




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