HONEYBEE(1)~アラフォードクターと一夜から始まる身代わり婚~
俺と相馬先生が行きつけのバーに入るとカウンターのスツールには瑞希の姿はあった。
瑞希は既に酔い、カウンターに顔を伏せていた。

「あ…相馬ちゃんと高木ちゃん」

バーのママ・キャッシーは元レスラーで引退後、オカマに転身した変わった経歴の持ち主。
俺達よりも大柄で体格も良く、ピンクのドレスが全く似合っていない。
でも、明るい人柄が客を惹き付け、清和会でも常連客が多い。瑞希も俺達も店の常連。
「一ノ瀬さんも来てたんだ…」

相馬先生が瑞希の隣に腰を下ろして、話し掛けた。

「相馬先生!!?訊いて下さい…久世さんが久世さんが…」

瑞希の口から久世の名前が出る。

「何!?瑞希お前…久世に何かされたのか?」

久世のヤツ…瑞希に手を出したのか?
「久世さんにフラれたんです・・・」

「えっ?どうして?久世君は君に…」

「久世さんは村上さんと…」

瑞希は既に酔っていた。
彼女の話では久世の大学の友人たちと小児病棟の看護師たちとで六本木のバーレストランで合コン。
でも、久世と村上のキスを目撃してしまい、瑞希はショックで途中退場して、このバーでヤケ酒をしていた様子。



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