HONEYBEE(1)~アラフォードクターと一夜から始まる身代わり婚~
相手の男性のコトは訊けなった。
隼也さん、槇村先生も相手のコトは何も知らなかった。

智咲先輩は帰宅し、槇村先生は私の荷物で埋もれたゲストルームのベットで就寝する。

******

時折、当番制で小児科外来の診察介助の仕事が回って来る。今日は私の当番で、早朝から外来の診察室の準備に追われた。

小児科外来の隣には産婦人科外来の診察室。
「何?今日は小児科の手伝い?」

白衣姿の槇村先生が現れ、私の姿を見るなり、駆け寄って来た。

「はい」

ツーブロックスタイルのセピアブラウンの髪。
優しそうな色素の薄い瞳に通った鼻筋。

白衣を着た槇村先生の顔は引き締まり、ドクターの顔になっていた。
昨日見た緩みっぱなしの顔は幻のように思える程。

「隣同士だね…まぁ頑張ろう…」

「はい」
隔週だけど、出張医として『清和会』の外来担当に来る槇村先生。
彼の診察は完全予約制で、リスクのある妊婦さんのみと限定されていた。


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