あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~
こんな若い人が女将修行をして頑張っていくんだ…とても大変な仕事だろう、私も頑張らないとな。


でも…


そこから『結婚』という2文字が、なぜか頭に張り付いたまま離れなくなった。


祐誠さんは、何度もずっと一緒にいたいって言ってくれた。


だけど、それは…


一生なのか、今だけなのか?


私にはわからないから。


嫌だな…


別に今はまだ結婚を考えてたわけじゃないのに、ちょっと不安になってしまった。


「ただいま」


「あっ、榊様、お帰りなさいませ。では失礼致します。ごゆっくりなさって下さい」


仲居さんは慌てて出ていった。


「彼女に何か言われた? 女将さんに似て、おしゃべりな子だからな」


「いえいえ、何も…言われてないですよ」


「嘘が下手だな、雫は」


「あっ、来年結婚するんですって。ここの料理人の方と…そういう話をしてました」


慌ててごまかす。


「結婚? あの子が結婚なんて、ちょっと信じられないな」


祐誠さんは優しく笑った。
< 233 / 394 >

この作品をシェア

pagetop