あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~
かなり広くて、奥行きのあるベランダ。


出たところに小さなヒノキの露天風呂が沸いていて、湯気が立ち、旅館の風情を漂わせている。


1番奥まで行くと湖とその後ろに悠然とそびえ立つ山々が連なって見えた。


「うわ…日が落ちる前と全然雰囲気が変わりますね…」


「ああ。そうだな」


夜の湖…


静かで真っ黒な水面が、風で少しなびいて…神秘的で綺麗だ。


でも、少し怖い気がする。


冷たい空気が、私の頬をかすめた。


「この夜の湖と山の景色。子どもの頃はちょっと苦手だった。ジーッと見てたら、何だか闇の中に吸い込まれてしまいそうで。でも、今はずいぶん慣れてしまった。ずっと見ていられる。まあ、大人になったということか…」


祐誠さんは31歳。


私は…25歳。


確かに、私は中身が伴ってるかは別としても、年齢的には大人だ。


結婚だって、いつしてもおかしくない。
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