二次元に恋するアラサー女子、ついに夢主になるっ!これは夢ですか、現実ですか?!
「それにしても、こんな暗闇の中、よくここまで来たな」

「暗闇だから来れたの。月明かりで何とか見えるし。照明があるところは衛兵が見張ってるでしょ」

「まあ確かに」

私たちは明かりの少ない城の裏庭に当たる部分を通りかかった。綺麗に整備された裏庭は、夜なのに無数に花が咲きほこり月明かりとほんの少しの照明に照らされて幻想的だ。

綺麗だなと見とれていると急に手を強く引かれ、ぼすんとアズールの胸の中におさまっていた。

「アズ……」

驚いて声を上げかけたがすぐに口を押さえられ、私はそのまま物陰へと連れられる。

『しっ!誰かいる』

アズールの視線の先を辿る。

確かに誰かがいる。
それも隠れるように。

誰だろう?
私は目を凝らす。

月明かりの中、髪の色が見える。
白髪混じりの金髪はよく知った人物だった。
私の父である王だ。
そして王は誰かと話をしているようだった。

王様が何でここに?
もう一人は誰?
髪が肩より長く、軽くウェーブがかかっている。
……あれは女性?

「っ!」

ふいに二人が抱き合い、その包容はまるで恋人のように優しく熱い。
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