あなたしか知らない
♢1


 花婿、やっぱりイケメンさんでした。
 全く目の保養よ
 しかもあの鷹田グループの御曹司でしょ
 豪華なお式、今時珍しくて

 本当うらやましい

一流ホテルの一番大きな宴会場で行われた、時代錯誤な立派な結婚式だった。
今時、父親の知人の挨拶が小一時間ほど続き、きちんとした仲人さんが雛壇の両脇に座る。

花嫁は白無垢。

式の前には親戚一同が上等な着物で、両脇にズラリと並ぶ、神前の誓い。

両家の立派な両親のための、昔のお手本のような式だった。

お色直しは白の清楚なウエディング。

イケメンの新郎も始終にこやかに、うっすら笑い、ある意味不気味だった。

ここまで両親にすべてを企画された式で、30才まで後数ヶ月の彼は、恥ずかしげもなくシレッとしているだけだったが、その雰囲気には、自分の結婚式の高揚感や、未来への期待は微塵も感じられず、ただ、スッとその場の主役を全うしているだけに見えた。

祖父母の時代には、こんな式もまだ見られていたのかもしれない。

別に珍しいことでもない。

お見合いで出会った2人、家のための結婚だった。

新婦の楓は、彼と出会った見合い席を、ぼんやりと思い出していた。

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