あなたしか知らない
♢7
10日目。
あれから真一に会っていない。
楓はずっと家の中にいた。
何をしてしまったのかな私。
追い出されるならともかく、なぜか真一の方が出て行った。
晩に2人分の食事はずっと作って、残りは昼に食べる。
その間、食料の宅配便が一度だけきた。
連絡をいれるが、既読無視。
いつまで続くんだろう。
真一はいったい何を考えているんだろう。
楓が早い時間に夕飯を2人分作り終え、ぼんやり座っていたら、インターフォンが鳴った。
珍しいな、
女性?
画面に、綺麗な女性が写っている、
(この人⋯⋯ )
と楓は思った。
結婚式の時の人だ。
[はい、どちら様でしょうか? ]
[太田です]
[はい? ]
[真一います? ]
[⋯⋯ ]
[真一に言われて、彼の忘れもの、届けに来たので、入れてください]
[⋯⋯ 、あの、勝手なことは出来ませんので]
楓はインターフォンを切った、
ドキドキしていた。
彼の忘れ物?
数分後、今度は内側の家の前の方のインターフォンが鳴る。
どうやって⋯⋯ 入ってきたのだろう。
マンションの下のエントランスには守衛さんもいて、住民の許可がないと、勝手には入れないのに⋯⋯ 。
真一が入れるよう、言っただろうか。
それなら、奥さんがこんな変な無視したら、恥をかいてしまう事にならないだろうか。
でも、真一います、ってあの言い方⋯⋯。
家にまできて⋯⋯ 。
心がザワザワする。
苦しくギューとなる。
楓はかなり慌てながら、真一に連絡をいれる、画面には10日分の返事のない吹き出しが続いている⋯⋯
[忘れ物を届けに、人が来られていますが、どうしますか? ]
と送ったが、すぐに既読なり、
[中で待たせてくれ]
とあっさり返事が来た。
中? 部屋の?
真一の結婚の条件をそのまま実行するように、誰も家に来たこともなければ、楓は真一の知り合いとも一度も会っていない。
なのに、家にまで入ってもらう女の人って⋯⋯ 。
それでも、マンションは綺麗には使っていたので、いま、ボンヤリ座りながら膝にかけていた毛布とお茶のカップだけしまい、玄関の扉を開けた。
そして、お互い、顔を見合う⋯⋯ 。
女の人に紅茶を出した。
ジロジロと部屋の中を見ながら、ズケズケと質問してくる。
楓は薄っすら笑みを浮かべ、なんの返事もしていない。
彼女の目が、ふと、2人分用意されてる食卓を見て、得意げにバカにしたように微笑んだ。
「もうお食事の用意? よい奥様なんですね」
「⋯⋯ 」
「真一どうですか? ちゃんと帰ってきてる? あら、私と過ごした夜には、連絡が来てたのかしら? 」
にっこり
無表情で唇だけ笑って、それでも楓は一言も返していない。
一切話さないでくれ。
だって、目の前にこんな人がいても?
針の筵ってこの状態?
辛いんだけど。
心が痛いんだけど。
数分か、数時間か、分からなかったが、10日ぶりに真一が帰ってくる音がした。
でもその時には「おかえりなさい」の声すら出ないぐらい、楓は体がかたくなって、心が痛くなっていた。
真一は部屋にはいるなり、
「家には来ないでくれと言いましたよね」
と女の人に言った。
「だって、ほら!
この間のネクタイ、困るかな〜って思って」
「いいから!
食事にでも出ましょう」
女性が勝ち誇ったように楓に笑いかけて、
「あらー、真一、いいの? 」
と食卓をチラッと見て、またにっこり笑った。
そのまま、真一は女性の背中に手を添えて、急かすように立ち上がらせると、一言も楓には言わずに玄関から2人で出て行った。
10日ぶりの真一だった。
彼の姿と声だった、まるで見たことない人みたいな、最後の日、熱く楓を確かに見ていた目は、ガラスみたいに何も写さず冷たかった。
同じ人?
こんなに傷ついた気持ちで、何をどう考えたらいいのか。
10日目。
あれから真一に会っていない。
楓はずっと家の中にいた。
何をしてしまったのかな私。
追い出されるならともかく、なぜか真一の方が出て行った。
晩に2人分の食事はずっと作って、残りは昼に食べる。
その間、食料の宅配便が一度だけきた。
連絡をいれるが、既読無視。
いつまで続くんだろう。
真一はいったい何を考えているんだろう。
楓が早い時間に夕飯を2人分作り終え、ぼんやり座っていたら、インターフォンが鳴った。
珍しいな、
女性?
画面に、綺麗な女性が写っている、
(この人⋯⋯ )
と楓は思った。
結婚式の時の人だ。
[はい、どちら様でしょうか? ]
[太田です]
[はい? ]
[真一います? ]
[⋯⋯ ]
[真一に言われて、彼の忘れもの、届けに来たので、入れてください]
[⋯⋯ 、あの、勝手なことは出来ませんので]
楓はインターフォンを切った、
ドキドキしていた。
彼の忘れ物?
数分後、今度は内側の家の前の方のインターフォンが鳴る。
どうやって⋯⋯ 入ってきたのだろう。
マンションの下のエントランスには守衛さんもいて、住民の許可がないと、勝手には入れないのに⋯⋯ 。
真一が入れるよう、言っただろうか。
それなら、奥さんがこんな変な無視したら、恥をかいてしまう事にならないだろうか。
でも、真一います、ってあの言い方⋯⋯。
家にまできて⋯⋯ 。
心がザワザワする。
苦しくギューとなる。
楓はかなり慌てながら、真一に連絡をいれる、画面には10日分の返事のない吹き出しが続いている⋯⋯
[忘れ物を届けに、人が来られていますが、どうしますか? ]
と送ったが、すぐに既読なり、
[中で待たせてくれ]
とあっさり返事が来た。
中? 部屋の?
真一の結婚の条件をそのまま実行するように、誰も家に来たこともなければ、楓は真一の知り合いとも一度も会っていない。
なのに、家にまで入ってもらう女の人って⋯⋯ 。
それでも、マンションは綺麗には使っていたので、いま、ボンヤリ座りながら膝にかけていた毛布とお茶のカップだけしまい、玄関の扉を開けた。
そして、お互い、顔を見合う⋯⋯ 。
女の人に紅茶を出した。
ジロジロと部屋の中を見ながら、ズケズケと質問してくる。
楓は薄っすら笑みを浮かべ、なんの返事もしていない。
彼女の目が、ふと、2人分用意されてる食卓を見て、得意げにバカにしたように微笑んだ。
「もうお食事の用意? よい奥様なんですね」
「⋯⋯ 」
「真一どうですか? ちゃんと帰ってきてる? あら、私と過ごした夜には、連絡が来てたのかしら? 」
にっこり
無表情で唇だけ笑って、それでも楓は一言も返していない。
一切話さないでくれ。
だって、目の前にこんな人がいても?
針の筵ってこの状態?
辛いんだけど。
心が痛いんだけど。
数分か、数時間か、分からなかったが、10日ぶりに真一が帰ってくる音がした。
でもその時には「おかえりなさい」の声すら出ないぐらい、楓は体がかたくなって、心が痛くなっていた。
真一は部屋にはいるなり、
「家には来ないでくれと言いましたよね」
と女の人に言った。
「だって、ほら!
この間のネクタイ、困るかな〜って思って」
「いいから!
食事にでも出ましょう」
女性が勝ち誇ったように楓に笑いかけて、
「あらー、真一、いいの? 」
と食卓をチラッと見て、またにっこり笑った。
そのまま、真一は女性の背中に手を添えて、急かすように立ち上がらせると、一言も楓には言わずに玄関から2人で出て行った。
10日ぶりの真一だった。
彼の姿と声だった、まるで見たことない人みたいな、最後の日、熱く楓を確かに見ていた目は、ガラスみたいに何も写さず冷たかった。
同じ人?
こんなに傷ついた気持ちで、何をどう考えたらいいのか。