SINOBI 隠苑の国に咲く花
紫乃陽と伊織
「いーおーりー!」
まだ朝靄がかかる早朝の街に、日の出を知らせる鶏のような甲高い声が響き渡った。
「隙あり!」
再び聞こえた叫び声と共にドシャンと木がなぎ倒された音が響く。
「…お前、いい加減にしろよ。」
“珀都忍者”の始祖と言われる尊福琥珀を祀る琥珀神社の境内。
そこで、こめかみを通る血管をこれでもかと浮き立たせる一人の青年。
「ち、外したか。」
そして、そう呟きながら軽やかに地面に着地する短髪の少女。
「朝っぱらから呼び出して何かと思ったら…。
ーーお前、殺されたいの?」
にやりと笑みを浮かべる少女に、
既に深く刻まれた眉間のシワをさらに深め、不機嫌さを露わにそう返す青年。