SINOBI 隠苑の国に咲く花
「朝が弱い伊織にはこれが一番効くからね!
ふ、眠いだろ、寝たいだろ?」
少女は聞く者の神経を逆撫でするような声でそう言った。
「…帰るわ。」
伊織と呼ばれた青年はそんな少女に呆れたように溜息を落とすと、踵を返し、神社の階段の方へ歩みを進めた。
「ちょっと待てい!
今日こそ決着を…!」
全くやる気がないどころか少女のことは眼中にもないという様子の伊織に、慌てて追いかけて手を掴む少女。
すると掴んだはずの手がぐいっと引かれ、身体ごと引っ張られる。
「わわ!」
引かれた体はそのまま勢いよく近くの木の幹に押さえつけられた。