SINOBI 隠苑の国に咲く花
「馬鹿紫乃陽。」
そんな言葉と共にさらに顔を近づけてくる伊織に心臓がドキリと大きく高鳴る。
「な、な…。」
別に掴まれているわけでも縛られているわけでもない。
いつでも逃げられるはずなのに、幹に縫い付けられた体は全くいうことを聞いてくれない。
伊織の顔は見る見る近づき、ついにお互いの鼻先が触れそうになったその時、
「おい、お前たち!!」
そんな嗄れた声が場を制した。
伊織はチッと軽音を立てて舌打ちをすると、紫乃陽から体を離した。