王子様ができるまで
そんなお母さんの問いかけにも返事はなく、玄関から動くことができないでいる私の身に、緊張感が押し寄せてくる。
お父さん…
大丈夫だよね?
ダメダメで最悪な父親だけど、私たちに向ける笑顔には愛情以外の何も含まれていなかった。
私が小さい頃、よく公園で遊んでくれていたことをふと思い出した。ひとりっ子の私は愛情たっぷりで育てられ、家の押入れに入り切らない程のたくさんのアルバムがある。
そう、まだお父さんがリストラされる前のキラキラした笑顔が…。
「妃名ちゃん!」
その時六畳間から血相変えたお母さんが走り寄って来た。
いつもおっとりのお母さんには、あるまじき行動。