王子様ができるまで


「そうでしたか…。
そんな暮らしをされていたのですか。」

「はい。
でも幸せでした。壊れちゃいそうな狭いオンボロアパートで、三人身を寄せ合って暮らした思いでは今もこれからも、ずーっと宝物です。」


ーーーー宝物。


ダメなお父さんと、そんなお父さんが大好きなお母さんとの

楽しくて、優しくて、愛がたくさん詰まった、大切な大切な…宝物。







「妃名ちゃん…。」


いつの間にかこの部屋に帰って来ていたらしいお母さんが、涙を目に溜めてドアの前に立っていた。


「え!お母さん、いつからいたの!?」


そんなお母さんを見て急に恥ずかしくなった。

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