王子様ができるまで


「妃名ちゃん…そんな風に思っててくれたのね、ママ嬉しいわ。本当に嬉しい。」


「ママ…。」


綺麗な涙をハラハラと流すお母さんを見て、ついつい口から懐かしい呼び名が零れた。

なんだか恥ずかしくて、最近お母さんをそう呼ぶことはなくなっていた。

でも、お母さんの愛情の雫のような涙に、つい気が緩んでしまったみたいだ。



「妃名ちゃん。
ママがどんな悪者からも絶対にあなたを守ってあげるからね。どんな手段をとってでも。」


お母さんの言う“悪者”とは、恐らく借金の取り立てをする、あのお兄さん達のことだと思う。


お母さんとお父さんが離婚したからといっても、私たち親子が危険にさらされることに変わりはないだろうから…。

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