王子様ができるまで
「何、馬鹿なの?」
っ!!
またあの声…
「ば、馬鹿って!!
って、え…?」
その声の主の方を見て、またビックリ。
お、王子様が…今、今…!!
喋ったよね?口動いてたよね?
いやいやいや…
目の錯覚かもしれない。
私は一生懸命目元をこすり、再び王子様に目を向ける。
「どうしたの、妃名ちゃん?」
あれ…普通に王子様だ…
慧くんは優しい声でそう言うと、首を傾けて私の顔を除き込んで来た。
「い、いえ…なんでもないです。」
やっぱりさっきのは私の勘違いだったんだ。
じゃあ、空耳かなー…恐い恐い。
そんなことを考えながら前を歩く私を見て、クイッと口角をあげる彼に、この時の私は気づいていなかった。