王子様ができるまで
「慧、その辺にしといてあげなよ。妃名ちゃんの顔すごいよ?」
いきなり隣に来た黒髪の男の子が、そう言って慧くんの腕から私を解放した。
「妃名ちゃん、大丈夫?」
「は、はい…。」
あらま、この人もかっこいい…。
切れ長な瞳に、男らしい堀の深い顔。
小麦色に焼けた肌がなんともヘルシーなイメージを彷彿させる。
ーーモテるだろうな、この人。
「夕紀、何やってんのお前。
妃名ちゃん、こっちおいで?」
黒髪の男の子の腕に納まった私に、そう言って手を差し出す慧くん。
こ、恐い恐い恐い…
「だーかーらー、妃名ちゃん恐がってるって。ね、妃名ちゃん?」
あまりの恐怖に慧くんのもとに行こうとしたのに、そう口を開いた黒髪の男の子によってそれは阻止される。
肩に回された腕にさらに力が加えられたのだ。