王子様ができるまで

「授業始めるぞ~。」


もうダメだ、と思った瞬間、ガラガラッとドアが開き教室に男の人が入って来た。


「おら、席つけー!」


先生か…。

ナイスタイミングでクラスにやって来た先生に胸をなで下ろす。


野次馬状態だったクラスメートも先生の声にパラパラと自分の席に散らばって行く。


「あ、あの…夕紀くん?」

「あぁ、ごめんごめん。妃名ちゃんの席はねー…」


夕紀くんは私の肩を抱いたまま、ポッカリと空いている教室のど真ん中の席に私を連れて行った。


「はい、ここ。」


「あ、ありがとう…。」


私はされるがまま、その席に腰掛けた。


ま、真ん中…。

四方から向けられる視線に居心地の悪さを感じながらも、教卓の方に目を向けた。

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