おたのしみ便
わたしから鏡子へ。
鏡子からわたしへ。

送り合う分厚い封筒の中身はいつからか手紙よりもささやかな贈り物たちが主体となり、わたしたちはそれ自体を「おたのしみ便」と呼ぶようになった。
少女漫画家になりたいという夢を世界で誰より早く鏡子に打ち明けると、次の彼女からの便には、小さなGペンと丸ペンの替え芯、そして折りたたんだスクリーントーンが入っていた。

「葉菜ならプロになれる! このくらいしか応援できないけど、がんばれー!」

漫画誌の付録の便箋に書かれたメッセージには、姉に頼んで画材屋さんに連れて行ってもらった旨が書かれていた。
その様子を想像すると、胸が熱くなった。
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