おたのしみ便
おたのしみ便
それを始めたのは、鏡子(きょうこ)が先だった。

幼稚園の年少組からずっと一緒だった鏡子とクラスが別れたことを知った小学校の入学式の日、わたしは満開の桜の下で泣いた。
新しい友達なんて、できる気がしなかった。
ただでさえ、学校という見知らぬ場所に放りこまれて慣れない生活が始まるのに、そこに鏡子がいないなんて。

葉菜(はな)ちゃん、大丈夫。あたしもさみしいけど、休み時間に会えるし、それにお手紙書くよ」
入学式の帰り道、前を歩く親たちの後ろで、鏡子は泣きじゃくるわたしの手をぎゅっと握りしめて言った。

そしてその数日後、ぱんぱんに膨れ上がった一通の封書が自宅に届いた。
「いしやまはな さま」
それは、わたしが自分名義で受け取った初めての手紙だった。
自分宛ての手紙。
うっとりするほど甘美なものに感じられた。
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