おたのしみ便
鏡子は服飾系の専門学校へ推薦入学を果たした。
彼女らしい進路なのが嬉しかった。

大学時代は、おたのしみ便が最も充実していた。

わたしは埼玉の実家から都内の大学に通い、鏡子は横浜の専門学校に通うためひとり暮らしを始めた。
日々の生活の中で生まれた余剰なものや、街で目についた鏡子の好きそうなものを手元に集めては、小ぶりのダンボール箱に詰めて発送した。
読了したばかりの、軽く読める文庫。福袋に入っていたストールやアクセサリー。化粧品のサンプル。いただきもののお菓子。100円ショップでついで買いした雑貨。

鏡子からの便も、そのようなものたちだった。こんなものあげたらちょっと失礼だと思われるのでは、と不安になる必要はなかった。
気負わずに、ささやかに、何でも贈り合えるこの気楽な関係が、たまらなく愛おしかった。
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