おたのしみ便
初めての恋は続かなかった。いつのまにか疎まれていることに気づいた瞬間、世界がしんと冷えた気がした。
鏡子からのお楽しみ便が届くまで、わたしはこの世に色彩があることを忘れていた。

失恋から立ち直る頃、また恋をした。漫画サークルの先輩。その次は、バイト先の同僚。
たいして器量も良くない自分を気に入るひとが次々に現れることに驚きながら、わたしはすぐに浮かれ、慎重なつもりが相手の地雷を踏み、そしてふられた。
好意を告げてくるのはいつも男の方なのに、終わりを告げるのもまた男からなのだった。

苦い恋のイニシエーションは、わたしの描く少女漫画を充実させた。プラトニックな恋の表現にも、少しだけ大人の毒を含ませた。
小1のときから一途に購読しているあの漫画誌の新人賞で「努力賞」をもらったのは、就職活動真っ最中の大学3年の終わりだった。
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