おたのしみ便
わたしは満足し、母にもらった便箋に鉛筆で手紙を書いた。
生まれて初めての手紙だ。

「きょうちゃん おてがみありがとう。
おたのしみぶくろもありがとう。
これからもいっぱいあそぼうね。」

折りたたんだ便箋を封筒の内側に沿わせるように差し入れると、のりしろにたっぷりと糊を塗り、封をした。
「できた……」
思わず声に出た。
ボリュームのある厚みをうっとりと見つめた。

「お母さん、お母さんっ」
完成したばかりの封筒を持って居間へ駆けてゆく。母は台所で夕食の支度を始めていた。
「お母さん、きょうちゃんの住所教えて」
「はいはい、もうできたのね……あら、もう糊づけしちゃったの?」
わたしの手に握られた封筒を見て、母は言った。
「その上からじゃ書けないでしょう」
「えっ」
「先に宛名書いてから封しなきゃ」
鶏肉を切っていた母は、手を洗いながら苦笑いした。
< 6 / 24 >

この作品をシェア

pagetop