メガネをはずした、だけなのに

 来月の宿泊研修に向けて、各クラスの学級委員が忙しくなってきた。

 放課後に残って仕事をしたり、昼休みに職員室へ行く用事もある。


 グループ分けが終わってから、遅れ気味だったB組の書類もなんとか形になってきた。

 相葉くんは、お一人様ミュージカルでクラスのみんなを笑わせてる。

 梨木くんも、清々しい爽やかな笑顔で校内のどこでも私に挨拶してくるけど……

 年上の彼女さんが、近くで見てないか心配してしまう。


 鋭い眼光としゃべり方がキツイ印象なので、脳裏に焼き付いてる。

 思い出しただけでも身震いするほど、あの時に受けた恐怖はトラウマになっていた。


「弓子いそがしそうだな」


 廊下を歩く私に向かって、背後から聞き覚えのある声がした。



「賢斗くん!」



< 103 / 184 >

この作品をシェア

pagetop