メガネをはずした、だけなのに
来月の宿泊研修に向けて、各クラスの学級委員が忙しくなってきた。
放課後に残って仕事をしたり、昼休みに職員室へ行く用事もある。
グループ分けが終わってから、遅れ気味だったB組の書類もなんとか形になってきた。
相葉くんは、お一人様ミュージカルでクラスのみんなを笑わせてる。
梨木くんも、清々しい爽やかな笑顔で校内のどこでも私に挨拶してくるけど……
年上の彼女さんが、近くで見てないか心配してしまう。
鋭い眼光としゃべり方がキツイ印象なので、脳裏に焼き付いてる。
思い出しただけでも身震いするほど、あの時に受けた恐怖はトラウマになっていた。
「弓子いそがしそうだな」
廊下を歩く私に向かって、背後から聞き覚えのある声がした。
「賢斗くん!」