メガネをはずした、だけなのに

 中学生の時に、二人の関係が気になった私。

 賢斗くんに直接、ニコルと交際してるか聞いてみたことがある


 なぜなら……


 小学生の時、家がピアノ教室だった賢斗くんのところへレッスンを受けるため通っていた。

 私は思いきって告白を決意、彼への思いを伝えたことがある。


 その時、賢斗くんからハッキリと言われた。


「この、ショパンの曲を上手に弾けるようになったら……」


「なったら?」


 グランドピアノを前にして、椅子に座る賢斗くんを私は見つめる。

 胸が、ぎゅっと締め付けられるように苦しい。

 私と視線を合わせないまま、賢斗くんは頬を赤く染め照れながら答えてくれた。


「俺のほうから、弓子に好きだって気持ちを伝える」


「えっ」


「だから、少し待ってくれ」


「うん……」


 その時、胸が張り裂けそうなくらいキュンとしたけど……

 冷静に考えれば、答えは保留のまま。

 中学生になっても、賢斗くんは何も言ってこない。

 約束したショパンの曲が上手に弾けないから?

 なんて考えてた時期に、ニコルとの噂を耳にした。


 不安な気持ちを押さえることができなかった中学生の私は、行動に出る。

 放課後の生徒玄関で賢斗くんを待ち伏せ、真相を聞き出すため問いつめた。


「そんな噂、信じるのか?」


 冷たい表情でクールに言われ、肩を落として一人寂しく下校した事を思い出す。

 私の勝手な思い込みで、賢斗くんを怒らせてしまった。

 中学生の時に体験した、ほろ苦い経験を脳裏に浮かべてると聞き覚えのある声が……


「ちょっと、弓子ちゃん大変だよ~!」



 とつぜん、横に立っていたニコルが騒ぎ始めた。



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