メガネをはずした、だけなのに

 口を閉じて不機嫌な表情の私を、横目で見つめてくる相葉くん。


「おや、またタヌキ寝入りかな?」


 ちょっと黙ってただけでタヌキ寝入りとか言ってくるから、疲れちゃうよ。

 クイズはいくら考えても答えが分からないし。

 いや、そもそもクイズじゃないと思うけど、いったいなんだろう?


「降参かな、綿貫くん」


 廊下を歩いてる同級生が、ジロジロ見てくるから恥ずかしいよ。

 早くこの場から立ち去りたい私は、首を縦に振って頷いた。


「今日の放課後、一年生のクラス役員がみんな集まる合同の会議があるのを忘れたのかっ!」


 そんなの知ってるよ相葉くん。

 ナゾナゾかクイズだと思ってたから考え込んでたのに!


「放課後に会議があるよ、とだけ短く教えてくれれば……」


「だまれ、綿貫タヌキくん!と言いたいところだが、余興は終わらせて本題に入ろう」


 珍しく深刻そうな声で言ってくる相葉くん。


「桜井くんのことなのだが……」


 賢斗くんの話が出ると思わなかったので、目を細めながら睨んでしまう……



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