メガネをはずした、だけなのに
思わず心の声が口から出てしまう。
相葉くんが憤慨してるのはいつもの事なので、放っておこう。
――その時。
どこかで、ピアノを弾いてる音が聞こえる。
「相葉くん、ちょっと静かに!」
私に向かって文句を言う相葉くんに、口を閉じてもらう。
耳を済ませてみると、どこからか音が響いてくる。
「ねえ相葉くん、このピアノの音はどこから聞こえてくるかな?」
「さあな、僕には何も聞こえないがね」
そんなはずはない、こんなにハッキリとピアノの音がしてるのに。
音楽室は吹奏楽部が使ってるので、ちがうと思う。
でも、かすかに聞こえるメロディは心地いい。
「相葉くん、先に帰ってね」
「なんだと!おい、どこに行くんだ綿貫くん!」
相葉くんをその場に残し、私は駆け出した。
廊下を走り、音の聞こえる場所を探す。
胸元に資料用紙を抱きかかえ、耳をすまして校内を移動する。