メガネをはずした、だけなのに

 二階や一階を見回ったけど、音がする場所を特定できない。

 でも、たしかに聞こえるピアノの旋律。


「いったい、どこから……」


 相葉くんは後ろから付いてこない。

 私だけ聞こえる?そんな事は考えられないよ。


 生徒はすでに下校した後で、部活の子は残ってるけど廊下や教室に人の姿は見かけない。

 一階の廊下を小走りで進みながら、顔を左右に振って確認していく。


 ――偶然。


 足を止めた場所で、ハッキリとピアノの音が聞こえた。

 顔を横に向けてみると、私がいる大きな新校舎に繋がる長い渡り廊下が目に付いた。

 新校舎から旧校舎に繋がる長い渡り廊下の先から、胸がドキドキするようなピアノのメロディーが聞こえてくる。


 でも、旧校舎には悪い噂しかない。


 木造平屋の作りで戦後に建てられた旧校舎は、お化けが出ると噂になっていた。

 クラスメイトや一年生も、一人で足を踏み入れてはいけないと、お互いに注意しあってた場所。


 私は、資料を持つ手に力を込めて覚悟を決めた……



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